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 ✤ シメマキSS(ラプソディア)
Posted on 08.2007
彼女が半隠居生活をしているのは、群島にある 『庵の小島』 である。
であるから、

( ハルナは遠いんだよっ!)

・・・・・と、ラマダに対する文句をぐっと飲み込んでから、マキシンは少しだけ見慣れた扉を叩いた。
乾いて硬く、軽い音。老いた住人に似合いの、古い家だ。




バレンタインデー企画その2 --- シメマキSS




( 十五、・・・十・・九・・・・・・   三・・二・・一 )

マキシンのカウントにコンマ一秒の狂いもなく、扉は開いた。
人との距離を正確に測る必要がない時でも、こういった感覚は常に鍛えておかなければ衰える。
接近戦を苦手とする彼女にとって、生き残る確立を高くする為の習慣だ。
しかし、また説教をされるのも面倒なので、急ぎ気を散ずる。

「すまんの」

シメオンはマキシンを招き入れると、旅に出る前に色々片付けようとしてこの有様、と、困ったように笑った。
戦いが終わったら旅に出るという話は、本人でなくパブロから聞いて知っていた。
その後に、マキシンは二度、ラマダを通してこの男に呼び出されている。
依頼は二度とも、彼の研究の助手的な仕事だ。
だから、今、それを聞いて、本当に旅に出るつもりだったのかと意外に思った。

「お主には稀少本を何冊か預かって欲しくてな。まあ、座りなされよ。そう急がずともよかろう」

古布を裂いて編んだラグの上に腰を下ろすよう勧めて、自分は台所に入る。

「中途半端な時間じゃな。小腹も空いておらぬのか?
 ・・・といっても、野菜のスープが少し残っているくらいか。お主、体を休めたら買い出しを頼まれてくれんかの」

その声はまるでアルト。
少女のような顔から発せられるに何の不思議もなかったが、年相応なのは、実は口調のほうなのだ。

「ほれ。少し熱いぞ」

手盆で運ばれたカップを受取るため、マキシンは腕までも覆う長さの手袋を取った。
マニキュアが似合いそうな爪には何も塗られていない。
シメオンは自分に伸ばされた手の真白さに胸が痛んだ。
この娘に好意を持っている事を認めていても、別の意味で胸が高鳴るような感受性は枯れて久しい。
というか、ドキドキする事が頻繁にあれば、身体がもたない。本当に年寄りだから。
と、自分に言い聞かせつつ、見るとはなしにといった様子で彼女を見る。
眼こそ赤くないが、どうもこの娘は色素が薄いのだ。
彼女は脆弱に見えれば狩られる世界にいた。
だからこそ、常に全身を隠す衣装は、元暗殺者にしては目立つ真紅。
それが彼女のイメージになり彼女を守って来た。
赤は意味があり過ぎる色にせよ、彼女にとてもよく似合っている。

まあ、家の中に女の子がいるのは、普通にいいものだ。

つい、幸せそうに微笑んだら 『何だ』 と睨まれた。
言えば更に怒るだろうから、また 『すまんの』 とだけ謝っておく。
すっかり怒られ癖がついてしまったものだと、シメオンは苦笑する。



「何を買ってくればいいんだ?」

マキシンは空になったカップをシメオンに返し、立ち上がった。
やれやれまだ休んでおれば良いのに、と、一応は口にするものの、台所に戻り、パン籠やら壺やらを覗く。

「そうさの・・・塩漬けの豚肉はまだ少し残っておるの。
 パンと、レンズ豆。それと、肉屋で売っているチキンパイを買って来てもらおうかの」

食事は具が多少違うだけで、いつもパンとスープだ。
今日はマキシンが一緒なので、チキンパイも付ける。
ハルナは辺境の小さな町。
店は点在せず一つところに集まっているから、土地勘のない者でも買い物には困らない。
マキシンはすぐに言われた物を買い戻って来たが、冬の日没は早いからと明日の出発をすすめた。

「薄味過ぎるかの?」
「いや」
「お主、一人で暮らしておるのであろう。料理はするのか?」
「するよ」
「得意か?」
「不得意だよ」
「そうか」
「アメリアが不味いと言ったからそうなんだろ」
「ああ、そんな名前の娘がいたな。顔はよく思い出せぬが、友達であったか」
「さあ。この前、用もないのに来た」
「それなら友達であろう」
「ロジェも来たよ」
「追い返しなさい」
「丁度留守にしていた」
「よし」

夕食を終える頃、スカーフで髪をまとめた老婦人が人参ケーキを持って来た。

「こんばんはシメオンさん。この前の若い娘さんがまたいらっしゃってるみたいだから、これどうぞ」

よく見てるのうと感心しつつ、ケーキを受取る。星型のクッキーが乗せられていたりして可愛い。

「ほう、これは美味そうだの。ありがとう」
「いいわねえ。ウチの孫は全然寄り付きゃしないんだから。若い人に年寄りの相手は面白くないんでしょうねえ」

おほほほほほ、と、無意味に一笑いをして隣家の老婦人は帰った。

「・・・・・どうかの?面白くないかの?年寄りの相手は」
「フン」
「今、食べるかの?」
「もう入らない」
「では、明日にしよう」

ケーキは清潔な布巾で包み、鍋の中に入れて蓋をしておく。
ついでに、椅子の背凭れに掛けた買い物袋を畳もうとして、底に何か残っている事に気づいた。
これはマキシンの買い物であろうと、その薄く四角い包みを渡そうとすると、マキシンはちらりと見て言った。

「今日はバレンタインデーだそうだ」
「?」

マキシンは面倒そうに言葉を足す。

「だから、バレンタインデー。
 チキンパイを買って、籤を引かされたらそれが当たった。今日はバレンタインデーだから特別なんだと」
「・・・・・ああ、ああ。そうじゃったか、驚いた。では、ほれ。お主が当てたのだからお主の物だ」
「やるよ」

生活水準が低めのこの辺りでは、昔からバレンタインデーという行事が盛んではない。
チョコレートは高価なものだから、普段は売ってもいない。
マキシンが引いたのは大当たりだったのだろう。
知れば、マキシンはくだらない事に運を使ったと不機嫌になるだろうから、余計な事は言わないでおいた。

( いや、この場合、運を使ったのはわしかの )

それならば、我ながらいい使い道だと、シメオンは一人、ささやかな良き出来事に感謝する。










+++

すみません。すみません。色々とすみません。
とあやまっても、ここまでお読みになる方がいらっしゃるのか疑問なシメマキ。
マイナー取り扱いのウチのサイトでも、ここ数年で一番のドマイナー。
ドマイナードマイナーとあまり言うては数少ない同士様に失礼かと思いますが、
新参者の私なんぞが思う以前からそう実感し続けていらっしゃるだろう。
シメオンはゲーム中では「私」と言うておりますが、プライベート(?)ではきっと「わし」。
実はこの後もちっとじいさん一方的(笑)ラブな展開を用意していましたが思いとどまりました。
さて、この二人、どうやったら一緒にいてくれるんだろう?
マキシンは旅に誘ってもついて来そうにないし、
シメオンが庵の小島におしかけ女房してくれてもいいんですけどね。ていっと追い返されそうです。
まあ、ウチのじじいはメゲないですけど(笑)
シメオンは見た目若いですけど、実際にはかなりガタがきてそうなイメージです。
それでもいける自分の年の差上限は天井知らずだなあと思います。
先日、某様とのメールでシメマキ熱を発散させて頂きましたが、
まだまだ治まらないったら。
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cetegory : 幻想水滸伝二次創作  ✤   ✤ 
2007年02月08日(木)  14:09 by 菊永まき

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