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 ✤ レイ撫 四話目 ( SS )
Posted on 30.2011
「 メンテナンス中でしたっけ?」

ミニッツの詰所。レインの左手を見て、円が問う。
聞いてはみたものの、レインの口癖を借りれば、まあ、どうでもいい事だ。

「 ああ、カエルくんは撫子くんの部屋に忘れましたー」

へえ?とでも言いたげに、円の目が薄く開いた。
今のやり取りの何処に引っ掛かったのかと、レインも軽く首を傾げる。

「 いえ。忘れ物は無意識の再訪の理由・・・なんて、言葉はなかったですかね 」
「 さあ?聞いた事ないですねー。それに、忘れ物があろうがなかろうが、
どうせ毎日のように訪問しなきゃならない身なんですよ―?」
「それも、そうでしたね 」

小さな子供みたいに鼻水をかむ撫子。しくしく泣き出したカエル。
思い出し笑いを円に見られるとまた面倒、とばかりに、レインはさりげなく椅子の向きを変えた。
それでも、小刻みに揺れる肩は隠し切れず、背中に円独特の視線が突き刺さる。

「 そんなに楽しかったなら、最初から先輩が行けば良かったでしょう 」
「 えー?だって、あの時間から散歩につき合うと、夜になっちゃうじゃないですかー。
解放感で余計な話をしちゃうとマズいでしょー」
「 先輩は言わなくてもいい事は言いますけど、言ってはいけない事は言わないくせに。
それとも、言うべきじゃない事を言ってしまいそうになるんですか?彼女には」
「 何ですかそれ。早口言葉みたいですねー」

レインは笑顔のまま、周囲に興味を失った目をモニタに戻す。
察しの良い円は、それ以上を続けようとはしなかった。
レインのこういった軽い拒絶の態度には慣れているし、自分も必要以上に突っ掛ったと自覚したからだ。

「 さて、と。撫子くんが寝てしまわない内に、カエルくんを取りに行くとしますか 」
「 ちゃんと戻って来てくださいよ。先輩の分なんか、済ませておきませんから 」
「 はいはーい 」




それが、ほんの十分前。
レインが歩く度に、長靴の中にまで入った水が、がぽっ、がぽっ、と不愉快な音を立てる。
濡れた靴下は気持ち悪いし、身体に張り付く服も髪も、何もかもが気持ち悪い。
珍しく頭上に黒雲をしょって、レインは左手に戻ったカエルに愚痴る。

「 ・・・・・君のせいですよー。その身体のどこから絹を裂く悲鳴ってのを出したんですか 」
「 ま、その、何だ。オレ様の危機に駆け付けたのはホメてやる 」
「 彼女は君の服を洗おうとしていただけでしょーが 」
「 いいや!オレの予知能力が言ってたんだ!
あのバカ娘は絶対に手を滑らせてオレ様を湯船に落としてぶくぶくいわすって!」
「 君にそんな機能は付いてませんよカエルくん 」

撫子の部屋。入りますよと扉を開けた途端、尋常でない悲鳴。
反射的にその場所へ駆け付けてみれば、湯船の中に撫子と、その手に大泣きのカエル。
そして、自分はこの有様。
『 ちょっとルークさん!床をこんなにして困りますよっ!』
廊下でモップを手にしたお掃除おばさんに叱られる始末。

「 湯をぶっかけられたくらい、いいじゃねーか。若い娘の素っ裸が見れたんだからよ」
「 別に興味ないですしねぇ 」
「 変態だなオマエ 」
「 えー?興味ない方が変態なんですかぁ?酷いですねー」
「 オマエ、あれだな。小学校に戻って好きな女の子をいじめて気をひくってトコからやり直せ。
男の人生で三本の指に入る大事な学習をし損ねてるぜ 」
「 何をエラそうに。君だって女の子にはモテなかったでしょー 」

カエルの言葉など、レインは乾いた笑い声で聞き流す。
だって、自分は、何も変わる必要なんてないのだ。
すべき事、したい事、願いはずっと一つで、もう、他は要らない。
心が勝手に動き出してしまわぬように、その身に残る声に耳を塞いだ。


『 ちゃんと、私の事、好きになってね 』

五話へ

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cetegory : 乙女ゲーム二次創作  ✤   ✤ 
2011年01月30日(日)  21:59 by 菊永まき

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