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 ✤ 岩舞
Posted on 08.2006
この未来を僕は知らない






+++ 変わる世界 +++ 


不意打ち、それしかない。
しかし、岩田はカンが良い。
舞はなるべく岩田の顔を見ないようにして、彼の横に座った。
舞はいつも彼の向かいには座らない。食事中は視界に入れない。酔うからだ。

『いただきます』

岩田がそう言って手を合わせた瞬間、彼は濡れタオルで顔を思いきり擦られた。



「!!!・・・・・・・何・するんですかぁ?」

岩田はお弁当を落とさぬように押え、空いた片手で舞の両手首をパッパッと手際良く掴んだ。

「ちっ・・怒るな。その道化メイクを落とした顔に興味があるだけだ」
「怒りはしませんけどねェ、これはプロのピエロが使う特殊なものですから、
 普通のクレンジングでも落ちませんよ。ましてや、そんなオシボリでは無理です」

呆れて濡れタオルと舞の顔を交互に見る顔は、少しもメイクが崩れていない。

「化粧しっぱなしだとな、肌が荒れると原が言っておったぞ。
 酒飲みには休肝日というものがある。お前は休化粧日というのを作ったらどうだ」
「寝る時はしてませんよ」
「そうか」
「寝込み襲いに来ちゃイヤですよォ」

ここで舞ぱんちは予想通り。
岩田は弁当箱のフタでガードしながら、卵焼きを口に運ぶ。
卵焼きは舞の手作り弁当には必ず入っている一品だ。
味は毎日違う。
醤油がドバッと入ってしまっていたり、砂糖がドバッと入ってしまっていたりするのだ。
今日のはダブルでドバッ、だ。



暑くもなく、寒くもなく、外で食事をするにはいい季節。
天気も良いのだから、プレハブ校舎屋上で昼食をとる者はもっといて良い筈なのに、
今日は二人だけだった。

「何が見えるわけでもないが、ここからの景色は好きだ」

グランド向こうに見える団地は、真昼の太陽を白い壁に照り返して眩しいくらいだった。
人が暮らしている日常の風景。それが、舞をひどく安心させるのかもしれない。


「日曜日は出かけるぞ」
「イイですねェ」

先の日曜はチケットも持っていなかったので、新市街を歩いた。
岩田は目立つ。だから、はぐれてもすぐに見つかった。
背が高いという事もあるが、姿が見えなくても目撃者を辿ればよいのだ。
舞は、岩田がいつか父のようにいなくなっても、彼なら捜し出せるような気がした。


「遠坂君、どうぞォ」

入り難い雰囲気だったのか、階段の所で回れ右をした遠坂に岩田が声をかける。
それを聞き、遠坂はふとんを抱えて上がって来た。
ふとんを干すのが趣味というこの男は、天気が良い日は朝のHR前に干すのが日課になっている。

「遅刻でもしたんですかぁ?」
「朝もちょっと屋上に上がれなくてね。階段の途中で引き返しました。
 屋上で告白すればいい返事がもらえるなんて噂でもあるんでしょうか」

あるのだ遠坂。と、舞は心の中で呟いた。
二週間程前、わざわざ岩田を屋上に呼び出したのもその為だ。
思い出し、真っ赤になった顔を見られない内に、舞は図書館へテレポートした。
午後の授業にはいつも出ない。
立場上、午前の授業には出るようにしているが、舞にとっては物足りないというどころのレベルではない。
それは善行や原、岩田も同じで、彼らも午後は仕事をしたり訓練をしたりしている。


初めてのデートはここだった。
岩田は『昔のあなたを思い出します』と言った。
それは思わず呟いた独り言だったのかもしれないが、舞にも聞こえた。
その時のかなしげな岩田の横顔に、ずっと何の事かと問えずにいるけれど。

(昔・・会ったか?奴は一度見たら忘れんぞ。
 もしかしたら昔は素顔でフツーに歩いておったのかもしれん。
 そう考えれば・・・・・・・お前の人生一体何があったんだ岩田?
 いや、それはそれとして・・やはりそれらしい人物に会った覚えはないが・・)


今日は集中力に欠けると判断し、図書館を出て公園まで歩いた。
誰もいない公園は、天気が良い程どこか淋しい。

舞はブランコに座り、少しだけ揺れてみた。
ギィ・・ときしむ音と、鎖の錆びた匂い。
揺れに身をまかせていると、だんだん眠くなってきた。

(よし・・天気がよければ日曜日はここでいつもより豪華な弁当を食べよう・・・
 チケットを陳情してもよいが・・な・・
 イトコ殿に『ふ・・まあいいか、いいだろう』とにやりと笑われるのは・・嫌だ・し・・)



ベンチに移動したところで、そのまま眠ってしまったらしい。
気がつけば、背負われて学校へ戻るところだった。
ぼんやりと周囲を見れば、いつもより高い位置から見る風景。
舞を背負った体はくねくねとしてないけれど、薬品の匂いで岩田とわかった。

「起きたのなら、降りてくださいよォー」

気配でわかったのか、岩田が手を離そうとしたので、舞は慌てて腕に力を入れた。

「ぐえ゛・・っ!・・・・・・・・・はぁはぁ・・首をしめられては息が出来ません・・はぁ・・」
「降ろそうとするからだ」
「何故降りないんですかぁー」
「気持ち良いからだ。味のれんの前まででよい。学校の皆に見られると煩くてかなわんからな」

首をしめられてはかなわないので、岩田は大きな溜息をつき、また歩き出す。
背中が覚えている重みの差が切なくもあったけれど、もう感傷的になってそれを顔に出す事はない。





「ん?何か言ったか?」
「いいえ、何でもありませんよ」
「ぐちぐち言わずに味のれんまで頑張ってみよ」
「次の電信柱までじゃあダメですかぁ?」
「体力ないなぁ、お前は」
(アナタが重くなったんですよ)


岩田が知る未来は、また違ったものになるだろう。
何度も会える嬉しさも、何度も別れるかなしさも、知ってる。
それが、これで終わりの予感もないけど、世界は変わり、未来は変わる。


↓2001年当時のコメントです。


イワッチは攻めタイプじゃないと思うので、舞→岩田っぽいですね。
告白も舞からだし。
イワッチはどーしても保護者の位置に考えてしまうので仕方がない。

イワッチが子供の頃の舞の教育係だったという設定も、詳しくは知らないで書いてます。
ガンパレの設定はもう『電撃ガンパレード・マーチ』に載っている以上の事は、
知らないでもいいやというこの態度(笑)
でないとイワッチは書けませんて。こんなややこしい人。
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2006年09月08日(金)  16:45 by 菊永まき

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