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 ✤ ロラクリ(幻水3)
Posted on 08.2006
手に残ったのは、頼りなく軽々とした感覚。
  小さな体が、転がっていた。

  
  わたしの罪に相応しい死が、いつか、この身に訪れるだろう。

  その時、わたしがどんなに幸せでいても、そこに行くよ。
  どんなに幸せでいても、きっと、わたしはお前を思い出すよ。



  わたしは、お前の痛みを思い出すよ。






木蔭 +++



『香りがキツいので、こんなに沢山置いては頭が痛くなりますよ』と、ルイスが忠告する。
しかし、供えるべき場所もなく、死者におくるその花を部屋に置いて眠った。

午後になっても、花の香りが髪に残っていた。
風が洗い流してくれる事を期待して、結い上げた髪を解き、屋上に立つ。
しかし、

「百合、ですね」

頭上からの声に、後ろではなく真上を見上げてしまい、そのまま体を反る。
誰かは、声でわかっていたけれど。



「ここに来るとは珍しいな。お前はいつも、あそこにいる」

確かに彼は、時間が許せばクリスが指差した場所にいつもいた。
そこから見つめる先には、彼の故郷があった。
クリスも彼について知っている事は少ない。彼は多くを語らなかったし、クリスも必要以上の事は聞かなかった。
誰にでもそれぞれに生きた歳月がある。それは、見下ろせばたまたまそこにいた、城門を通る商人にも等しく。


「・・・私は、人の考え方はよくわからない。だから、話してみませんか?
 あなたはきっと、助言を聞きたいわけではない」

五人で相談の上、この役に抜擢されたのか、それとも単独行動なのか、
ロランはここに来た理由を単刀直入に告げた。
上に立つ者として、平気な顔をしていたつもりだったのに、理想の自分からはいつも遠いとクリスは思った。


「子供を殺した。反射的に体が動いてしまった」
「殺意を感じたから反射的に体が動いたのでしょう。戦場で向かって来るものは敵です」
「理屈じゃないんだ。そうではなく、そうではなく・・」
「クリス様、私は、本当の所はわかる事は出来ません。それは、あなたしか分からないのです」
「・・・そうだな」
「泣いてやりませんか?」
「泣く資格なんか、ない」
「泣いてやってください。死は悲しいものです」
「だって、ロラン。わたしが殺したんだよ」

細く固いロランの体は一本の大きな木のようで、クリスは躊躇いもなく抱きついた。
彼は、ただ立っていた。彼は、その両腕で抱きしめずとも優しかった。





石の上を通った鳥の影に、ロランはゆっくりと顔を上げた。そこには、当たり前に青い空がある。
人よりも高い背など、上空からはきっと同じで。それでも、今、クリスを隠すには十分で。


「『あなたがたの中で罪のない者が、最初に彼女に石を投げなさい。』」
「・・・・?」
「誰一人、罪のない者はいなかったのですよ。クリス様」
「・・・・・・」
「私は宗教は苦手です。よくも知らない。ただ、何かで読んだこの言葉は何故か心に残っています。
 ・・・それだけです。気にしないでください。あなたは、きっと、赦されたいわけでもない」





しばらく泣いて、赤い目で彼を見上げる。
その先には空が、クリスの上にも、当たり前に青い空があった。


「草原に一本の木があってな、そこに生えていたのではなくて、旅人が休めるようにそこへ植えられた木だ。
 何処の森から運ばれて来たのかは知らない」
「・・・はあ」

先のロランのような唐突さは彼女らしくなく、とりあえず、ロランはそれだけの言葉を返す。

「お前は、それに似ているよ」
「・・・そうですか」
「ありがとう。・・休んで、立ち上がり、また歩き出す気分だ。わたしは行くよ」

ロランは滅多に使わない筋肉を使うようにぎこちなく笑った。
クリスはにこっと笑い、くるりと背中を向けた。振り向けばもう、いつもの彼女だろう。
クリスの背中で揺れる銀の髪は、きらきら光る水面のようで、ロランは軽く目を細める。

ひかれるように、その後ろを彼も行く。
罪のない者はいないというこの地上で、自らの信じる道を進む、人という生き物の一途さに。




+++

(2002.10.12作品)

以下当時のコメント↓
『ロラクリという辺りがすっげえまきさん』とお友達が一言でまとめてくれたこのカップリング(笑)
軽いほのぼのくすっな話を~と思ったのですが、ルルイベントを避けては通れないのだクリスネタでは。
(これを別名関所という/笑)
ロランが読んだ一節はヨハネによる福音書第八章より。
宗教には全く詳しくないし、信仰もしていないですごめんなさい。
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cetegory : 幻想水滸伝二次創作  ✤   ✤ 
2006年09月08日(金)  12:01 by 菊永まき

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