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 ✤ きりトモSS
Posted on 28.2008
「じゃあ、また新学期に」
「ああ、またな」

土井先生が門の所で山田先生と立ち話をしている。
その横で待っているきり丸に、級友たちが声をかけて、それぞれの家へと帰って行く。

わたしはその様子を、教室の窓から見ていた。

知ってる。きり丸には家がない事。家族もいない事。
全部、戦でなくしてしまった事。
だから、彼は長期の休みに入ると、土井先生の家で過ごす事。

さて、と。
そろそろこれを渡しに行こう。

わたしは、机の上に置いていた包みを持つと、誰もいない教室を出た。
振り向くと誰かがいそうな、そんなざわめきの名残を感じながら。

+++ 春 来にけらし +++

「土井せんせーい」
「ん?どうした。くの一学級委員長トモミ」
「その説明的な呼び方やめてくださいよ」
「悪ぃ悪ぃ。で、何だ?」
「くの一教室の皆で手分けして、家が遠い生徒や先生たちにお弁当作ったんです。お昼にどうぞ」
「そりゃあ助かる。ありがとうな」

『どういたしまして』
と、土井半助の方を見て言いながら、トモミの手はきり丸の方にも同じような包みを突き付けていた。

「?」
「早く取りなさいよ。アンタの分なんだから」
「オレの?」
「アンタも一緒にいるのに土井先生にだけなんて子供じみた意地悪はしないわよ」
「・・・・・」

きり丸はぽかんとした顔でそれを受け取ると、急に「にぱっ」と笑った。

「なっ・・何よ」

嬉しそうな顔をされるとは全く思っていなかったので、トモミはうろたえて後ずさる。
『毒入りじゃねーのか』くらいの嫌味こそを覚悟していたのに。

「おっ・・お礼くらい言ったらどうなのよ」
「おう、ありがとうな」
「ふんっ。じゃあ、アンタも気をつけて帰りなさいよ。土井先生にあんまり迷惑かけんじゃないわよっ」

ザッ・・

さすがくの一学級委員長。言うだけ言うとあっという間に姿を消した。
きり丸はトモミがいた場所に向かってぶちぶちと情けなく文句を言うしかなかった。

「へっ・・いっつも年上ぶってエラそうに」

でも、決してイヤではない。それが居心地悪くて、きり丸は地面を軽く蹴り誤魔化した。

「あれ?きり丸ー、もうとっくに行っちゃったと思ってたのに」
「だって土井先生が山田先生と・・・」

呑気そうな乱太郎の声に振り向き、そしてその顔を見て(はーっ・・)と脱力した。

「おい、乱太郎、オマエまたどっかで居眠りしていたな」
「え?ユキちゃんに『お弁当作るから待ってて』って言われて、そんで食堂の前で待ってる内に・・でも何で?」
「墨で顔にラクガキされている。ヒゲとかマツゲとか『オマヌケ』とか」
「えええーっ!もーやだなぁ。どーしてわたしユキちゃんに嫌われているんだろう」

乱太郎はトボトボと洗面所の方へ向かった。
ここで『嫌われている』と思ってしまう辺りが子供である。

「・・・そうだよな・・フツーの弁当のハズねぇよな。土井先生のとオレのと中身が同じとも限らねぇし・・でも・・」

きり丸はお弁当をマジマジと見つめて、食べても大丈夫だろうかと考えた。
考えて、大丈夫だろうと判断した。
何故なら、騙す気なら彼女はもっと優しい態度で渡したに決まっているのだ。
とすれば、これは本当にただの弁当なのだろう。

『アンタの分』

ぷん、としてそう言ったトモミの横顔を思い出し、きり丸はもう一度(にまっ)と笑った。
もし、美味しかったら、アルバイトで貯めたお金のほんの一部からでも出して何か買って礼をしようなんて事は、ドケチのきり丸に思いつくはずもなく。
でも、大掃除の後、アルバイトで髪洗いをした時の事を思い出し、
次に髪を洗ってやる時は、トモミは真っ直ぐのきれいな髪をしているから、
特別に卵シャンプーを使ってやってもいいかなと思った。





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2008年11月28日(金)  14:53 by 菊永まき

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